先日ある会合に出席したら、会合の後にフィリピンで有料の老人ホームを経営されている方と、お話をする機会がありました。
その方は現在フィリピンのネグロス島で日本人の退職された方を対象に、介護付き老人ホームを経営されているのですが、現実は海を渡って終の住処として人生を過ごすという決心の日本人はそう多くはないそうです。
その施設では、日本語を話すフィリピン人の介護士を抱えているので、逆に介護施設を日本で作り、そこに介護士として派遣する事業を今現在考えられているようです。
しかし、日本では多くの施設が外国人介護士を求めていたものの、来日3年後に介護福祉士の試験に合格することが継続滞在の条件とされていました。この資格は日本人でも半分は落ちるという難関で、それを慣れない日本語で受験するのですから合格はほとんど望めず、「永住されたら迷惑だから3年で帰ってくれ」という日本の意図は明白です。
その方は「日本人は、外国人労働者にすこしでも門戸を開放したら移民が押し寄せてくると思ってるんですよね」「でもね、日本人は大きな誤解をしています」 外国で働きたいフィリピンの看護師・介護士が目指すのはなんといってもアメリカで、次いでカナダやオーストラリアなどの英語圏だそうです。これらの国では給与が高く、長く働くことができ、永住権や市民権も取得できるのですから、日本に来るのとは条件が全然違うのです。
日本の介護施設から、「優秀な人材を紹介してくれ」と、よく言われるそうですが、昔から、優秀な介護士は日本になど来てくれないのが現実だったのです。
現在、日本では入管法を改正し、外国人労働者の受け入れを拡大しようとしていますが、これは全国で人手不足が顕在化し、外国人に来てもらわないと経済が回らなくなったらからです。ですがこんなことは、何十年も前からわかっていたことです。未来は不確実ですが、出生率や死亡率は先進国では大きく変化しませんから、人口動態だけは確実に予測できるのです。
それにもかかわらず日本政府は純血主義に固執し、ようやく人手不足に慌て出しても「いわゆる移民政策は採らない」といっています。これは現政権が「真正保守」だからではなく、日本人の大半が「排外主義者」で、選挙を考えればそうやって宥めるしかないからでしょう。
「日本は外国人労働者の獲得競争から脱落しつつあります」なぜなら 「英語が公用語となっているフィリピンでは、高卒以上であればある程度の英語を話せますから、英語圏ならわざわざ外国語を覚える面倒がないでしょう」アジアでは香港とシンガポールで英語が広く使われており、1人あたりGDPでもシンガポールは5万8000ドル、香港は4万6000ドルで、3万8000ドルの日本よりずっと豊かです(2017年)だったらなぜ、英語が通じず、貧乏なくせに「外国人は迷惑だ」と思っている国で働かなくてはならないのでしょうか。
未だ多くの日本人が日本はアジアの人達のあこがれの国などと思っているようですが、介護士に限らず優秀な人材は、どの国で働くかを自分で選択することができます。「日本はこれまでずっとアジアでもっとも豊かな国でしたが、いつのまにか優先順位のはるか下に落ちてしまったことを、あと10年もすればすべての日本人が思い知ることになるのでしょうね」とその方は最後に仰っていたのが強く印象に残りました。
久々の復活ブログが少々固いものになってしまいました。