派遣法の改正による影響

 日本人材派遣協会によると、派遣会社の事業者数の数が2017年度は、6万2,408件だったそうです。2015年度の事業者数の数が7万7,956件だったそうで、このわずか2年の間で1万5千件も減少したことになります。これは労働者派遣法改正で派遣事業が許可制となったことや、全国的な人手不足で派遣スタッフの確保が難しくなったことが原因だと考えられ、その結果中小規模の派遣会社が廃業したり、大手派遣会社に吸収されたのではないかと推測されます。

さて、2020年4月から非正規雇用者と正規社員の賃金が同一になります。これは、派遣先で働く派遣労働者と派遣先に雇用される通常の労働者との間の待遇差解消を目指した、労働者派遣法の改正によりますが、同一労働同一賃金の推進が、人材派遣業界の今後を左右するものではないかと我々は思っています。

 この制度の発足により、今後は働く業務の内容が同じであれば、同一労働同一賃金として処遇しないといけなくなります。この同一労働同一賃金では2つの方式が予定されています。1つが「派遣先均衡・均等方式」、もう1つが「労使協定方式」です。

 「派遣先均衡・均等方式」は、派遣労働者の賃金を派遣先で働く正社員と均等な賃金水準にするもので、派遣会社は派遣先の賃金水準の情報を派遣先より得て、これに基づき派遣労働者の賃金を設定する方式です。これに対して「労使協定方式」は、厚生労働省が公表している都道府県別・業界別の平均賃金を基準として、労働者代表の合意を得て派遣労働者の賃金を設定する方式です。

 いずれの方式も派遣労働者の賃金の引き上げが起こるため、派遣会社は派遣労働者の賃金アップ分を派遣先と、単価改定の交渉を行う可能性が高いのですが、派遣手数料の負担増を嫌がる派遣先との交渉が難航すると、賃金アップ分を派遣手数料に転嫁できない。また、これまで派遣労働者に任せていた仕事を自社で対応する内製化を進める派遣先企業も増えはじめ、派遣会社の受注機会減少につながっていくのではないかと考えます。

派遣料金のアップが難しい派遣会社は、このような傾向が今後も続けば、従来から派遣労働者の賃金を低く抑え、他の派遣会社に比べ安価な派遣料金で同業他社と競争してきた派遣会社では、良質な派遣社員が集まり難くなるのではないかと私自身思います。当社はこの機会に良質な労働者を確保できるいい機会になると考えています。他社に比べ安価な派遣料金で仕事を奪っていくような派遣会社にとっては厳しい状況を迎えるのではないかと考えています。